永遠に続くような時のはじまり


 

 遠い昔の様でもあり、つい昨日の事の様でもあり、
まだみんな子供で、笑う事しか知らなかった頃のお話です。

 此処にも一人の“大人になれない男の子”がいました。
 しかし彼は大人になれない代わりに“不思議な力”を持っていました。
彼はその不思議な力でみんなに夢を見せたり
大人達からみんなを守ったり、そんな生活をおくっていました。

 なぜなら、彼の棲む“ネバーランド”では、大人はみんな海賊です、
何も言わずに捨て、何も聞かずに奪うのです!

 そんな、ネバーランドに棲む彼にとって、
子供と大人が一緒に暮す人間の世界が、とても不思議でした。
 そして彼は、そんな不思議な人間の世界で遊ぶ事が大好きでした。

 

そして今日も人間の世界に遊びに来たのです。

 

 人間の世界の子供たちは、何故か早く大人になりたがり、
ここにもそんな女の子がいました。

 
「あなた・・・誰? どうして泣いているの?」

 
「影がくっつかないんだ。」
 「最初はスグ戻ると思ったのに、なかなかくっつかないんだ」

 
「え! 影?」

どうやら、ネバーランドから来た彼は、
窓の開いている家に忍び込み、そこで遊んでいるうちに
影をなくしてしまったようです。

 
「あたしが一緒に捜してあげる!」

女の子がそう言いだすと、彼はあわてて窓から出ていってしまいました。

 

 そして次の日、少女が部屋で本を読んでいると、窓を叩く音がします
ふと窓の方を少女が見ると、窓の外に、昨日の少年がいます。
少女があわてて窓を開けてあげると、彼は当然のような顔でこう言いました。

 
「この窓は閉めちゃ駄目だ、僕が入れなくなる」

 そう言い終わるとキョロキョロと“影”を捜しはじめました。
少女は彼の言葉に驚きながらも、一緒に影を捜しはじめました。
それから随分長い時間捜したのですが、それでも“影”は見つからず、
とうとう疲れて、二人とも眠ってしまいました。
そして朝になると、彼の姿はみあたらず、
窓のところに手紙が置いてありました。

“一緒に捜してくれてありがとう。”

その日以来彼は、毎日のように少女のところへ遊びに来るようになりました。

 

 こうして出会い、幾度となく会い、
彼は少女に恋をし、あるひとつの約束をします。
それはこんな約束でした。

 
「僕は大人にはなれないけど、ずっとそばにいて君の事を守ってあげる」

それを聞いて、少女は喜びました。
そうです、いつしか少女も彼に恋をしていたのです。
そして二人は永遠に続くような時のなかで幸せに暮しました・・・

 

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