凍える冬

〜ナトリウム灯〜

 

雨上がりの夜空

通り過ぎるナトリウム灯

永遠に続くようなオレンジの光

このまま死んでもいい気がした

 

まだ君に、家族がいた頃の記憶だ

 

君が待つ夜の谷間に忍び込み

君の生活を垣間見たあの夜

 

「居場所が無い」

 

そう言っていた君の言葉は文字通り

2LDKの間取りに小さなベッドがひとつ

父と娘は人として当然の生活

 

君の居場所はキッチンの丸椅子と

押入れに敷かれた布団

君の形跡はそれだけだった

 

「ここで煙草を吸うのが日課」

 

そう言って丸椅子を指差す

僕と出逢って煙草を辞めた君を

抱きしめる決意をした

 

そして

二人の部屋と二人の夜に

四年の月日が流れ

君に笑顔が戻った頃

君は一人旅に出た

 

永遠に続くように思えたオレンジの光は

今も僕等を照らし続けているのかもしれない